隠居の独り言(1096)

天高く馬肥ゆるの秋、東京は台風一過の青空が素晴らしい。本格的な秋がやってきた。
今日、10月1日は衣替え。俳句にも「衣替え」という季語がある。江戸時代に入って
宮中も武家も春の4月1日と秋の10月1日には衣替えをしたという。市井の民も袷の
着物から綿入れを着たと歳時記に書かれている。今は学校の制服が変わるのが一番だが
半袖の白っぽい学生たちが一斉に黒っぽいジャケットに身を包むと街の中の雰囲気も
秋らしくシックで季節の変わり目を感じさせる。服装だけでなくこの時期、家の中の
模様替えもしなくてはならない。わが家は夏の期間は襖の大部分を外して部屋を広くし
涼を取り入れたが秋風が吹き始めると襖を入れる。天気の良い休日は網戸や簾の水洗い
雨戸や空調の掃除、庭の手入れ、衣服の入れ替えなど家の内外の模様替えは欠かせない。
考えてみれば日本家屋は夏向きに出来ている。障子や畳は風流で和風に欠かせないが
壁の木材や土壁などの自然の素材は冬には日が落ちると急速に温度が下がってしまう。
窓の広いのは自然の風が通りやすい反面、寒気を遮断するには小さな窓のほうがいい。
小さな縁側は家の内と外の合間で座って庭を愛で月見や雪見等の風情は格別の思いだ。
でも最近は日本家屋も様子が変わってきた。都心では木造建築は許可が下りないのは
災害に弱いからで西洋風の家が増えマンションが多くなっている。厚い壁、小さな窓、
レンガやコンクリートで外界と遮断して内には心地よい空間を作るように出来ている。
和風と洋風の長短はあるが昨今の酷暑や大雪など自然環境が大きく変化している時は
贅沢を言わせて貰えば夏は涼しい日本家屋、冬は暖かいコンクリートの家に住みたい。
夏の暑さも冬の寒さも滅法弱い自分ゆえに春と秋の過ごしやすいシーズンは大好きで
いきいきと心が弾む。今年の秋も充実のときでありたい。