隠居の独り言(1149)

バンドの音合わせは楽しい。いつも時の経つのを忘れ練習に励んでいるが、それ以上に
終わった後のメンバーたちと飲食をしながらの談論風発の時間ほど愉しいものはない。
そこは師匠も生徒も立場を離れ一個人として個性的な魅力に満ち溢れ話が弾んでいく。
クラシックギターは大抵は独りで弾くものでイメージ的にはオタク趣味とも云えるが
同好の友と合奏すると明るい雰囲気になる。バンドを組むというのは小宇宙のようで
引力に吸い寄せられた同好の仲間だろう。音を合わせる楽しみ、心を合わせる楽しみ、
合わせて一つの音楽を作る楽しみは、経験を積むほどに醸成された良い味が出てくる。
楽しい歓談は同好の仲間だからこそ成り立つ。といってあまり人数が多いとそれぞれに
気が散って話が纏らない。我々バンドはクアルテットで少なからず多からず和気藹々
話が合う丁度いい少人数で、音楽のこと、練習のこと、その他、四方山話に花が咲く。
美味しいものを食べ、それを伴奏にして興じる談話タイムは贅沢な至福これに尽きる。
メンバーの一人はペルー生まれの本場の超絶技巧、一人は20年間の南米生活で鍛えた
美しい声とラテンギター、一人はギターとスペイン語の達人でマエストロとラテンを
アドリブの即興を楽しんでいる。あとの一人を加えてクアルテットが構成されている。
音楽の達人たちの中に入れて頂いて幸せそのものだが難度と濃縮度がまた素晴らしい。
話しが変わるが、その昔、イギリスにルナー・ソサイティ(月光会)という会があって
詩人、神父、発明家、医師、作家、物理学者、化学者などの専門を持った人たちが
月に一度、満月の夜に会食して談論風発に時を忘れたという。そこから素晴らしい発見、
発明が生まれた。そんな有名な話を例に持ち出すまでもなく気の合った仲間の談論は
音楽にとどまらず人生の進歩や発展に、どれほど有意義なのか計り知れないものがある。
持つべきものは友、人は一人で生きていけない。嬉しいとき、悲しいとき、苦しいとき、
尊敬できる友の有難さは何に替え難く会えば気持ちが和む。話しはまたまた変わるが
自分はしばらく諸々の事由で練習後の団欒に付き合えないので淋しい思いをしている。
世の中はままならない。