隠居の独り言(1312)

七月も今日で終り、暦通りの「大暑」で各地の真夏のニュースが紙面を賑わせている。
一日で最も暑い午後は空調の効いた近くの図書館でいっときを過ごすことにしている。
良寛さんは「散る桜 残る桜も散る桜」と詠んだが、この句が身に沁みる今日この頃で
昨年には傘寿を過ぎ、やや苔のような感じになった自分だが、ただひとつ気がかりは、
これからまだ命を長らえてボケたらどうしようということで、現に同世代の友人の中で
心の疾患を患い連絡できなくなった人もいる。しかも、あの人がと思うような人だから
余計に恐ろしい。決して他人事でない。歳も歳だから近く自分がそうなったらどうしよう。
人間も機械のように沢山の部品の集合体だから部品の耐用年数が切れれば当然に
故障するが、機械のように交換が出来ないのが辛いところで錆びるに任せるしかない。
認知症などが原因で徘徊し行方不明になっている人が年間、約一万人に上るという。
一万人という数字は一年間で交通事故で亡くなる方とほぼ同じというから末恐ろしい。
先日のテレビで、認知症で徘徊した女性が自宅から離れた所で無事保護されたにも
関わらず身元が言えなく介護施設で生活し、7年ぶりに家族と対面した番組があった。
女性はかつて司会業など聡明でとても明るく振舞って周りからも評判の人だったのに
どうして悲劇の主になったのか、誰も説明できない認知症という病気が一段と悲しい。
文豪の丹羽文雄も、元アメリカ大統領のロナルド・レーガンも、アルツハイマーという
認知症で晩年を過ごしたが、この病気は現在根本的な治療法がないというのも怖い。
たとえ老化防止に役立つという様々な趣味や仕事などで頭を使っても関係ないという。
歳を重ねれば誰もがテレビ場面の当人になる可能性が無いとは限らない。報道では
日本は世界一の長寿国と目出度い反面に、長く生きたデメリットも心せねばならない。
最近の医療の進歩は目覚しい。歳重ねての三大死因のガン、心疾患、脳血管疾患も
必ず克服できる時代が来る。しかし脳の老化による認知症は最も難しいとされている。
明日は我が身の認知症状で最近の物忘れが気になって仕方ない老夫婦の昨今だが
どちらが先に惚け出すのか、統計学的には自分が年上なので順当ならこちらが先だ。
痴呆になったら、出来れば関西弁でお願いしたいと思う「お前、ほんまに阿呆やなぁ」
「呆け、何やってんねん」関西弁は柔らかいので多少気分も和らぐだろうが住む所が
関東なので「バカ、マヌケ」きつい言葉で罵られながら暮らさねばならないのは憂鬱だ。
もっとも本人がボケてしまえば何も分からないが・・・