隠居の独り言(1313)

八月になると、マスメディアは戦争の反省の報道ばかりで暗くなる。戦争の苦労話しと
負けた悲しさと惨めさと戦争は二度としてはならぬと執拗に繰り返す。テレビ画面は
空襲の後の瓦礫の街の風景や粗末な服装、食糧不足、そんな情景を映し出されるが
写真がモノクロだから余計に当時の惨めさが実感として体験した人の胸に染み亘る。
でも私達もマスメディアも含め、いい加減、負け戦の惨めな気分や報道を卒業したい。
戦争体験はどんなに口酸っぱく話をしても完全に伝わらない。体験というのは実際に
身体に刻まれた経験で本人以外分からないし、いずれ風化していくのが世の習いだ。
済んだことは戻らない。惨めな体験を繰り返し聞くより何故敗戦に繋がったか、という
歴史反省が最も必要であり、今後に生かさなくては敗戦の苦労が水泡に帰してしまう。
今、集団的自衛権論議がかまびすしいが、そもそも集団的自衛権とは国連憲章上、
全ての国に認められた権利であるのに日本だけが今さら国論を二分している現実は
世界の奇観だろう。集団的自衛権の意味も知ろうとしない日本人のここまで洗脳され
卑しめられたかと思うと本当に情けない。周知の通り江戸時代の日本は徳川幕府
守るためだけの鎖国主義をとってきた。外国とは一切関わりなく長年暮らしてきたが
鎖国をしている間に諸外国、とくに文明面は凄い発展を遂げていた。文明のみならず
国家という概念が民族主義と相まって国家間の競争と争奪戦が大きく変わっていた。
黒船来航で幕末の日本は慌てて開国し特にイギリスに助けられて植民地にならずに
済んだ。けれど当時のロシアの圧迫は尋常でなく明治には日露戦争にも発展したが
イギリスの援助のおかげで無事収まった。それは日英同盟集団的自衛権のお陰で
後の第一次世界大戦もイギリスとの同盟関係で勝ち組に残れたのは言うまでもない。
日本もこのあたりで日清、日露、世界大戦の勝利の原因と結果を反復するべきだった。
明治以来、敗戦を知らず、勝利の祝い酒に酔いすぎた日本の政治家は膨満で奢って
恩あるイギリスを裏切り日英同盟を破棄し1933年国連を脱退し世界の孤児になった。
ここが一番の反省材料で、日本が再び鎖国国家になったのが先進国から顰蹙を買い
同盟国同士の集団的自衛権を自らが廃棄したのが奈落への一歩で、この時点から
地獄に堕ちていった。個人でも国家でもひとりだけ仲間外れになることはいかに悲しく
惨めなものか。もしかして集団的自衛権行使という本当の意味合いを知っているのは
安倍総理だけではないか。近代史を読むたびに昭和の初め頃の傲慢で無知だった
日本の政治家を知れば知るほど腹が立つ。あの頃何故日本が堕ちたか、検証したい。