隠居の独り言(1352)

2014年度のノーベル物理学賞を受賞された、赤崎勇、天野浩、中村修二の先生方に
心からお祝い申し上げたい。今回の受賞理由は「高効率青色LEDの発明」で、まさに
応用物理学分野からの受賞で日本の応用物理学会にとって大きな栄誉で誇りに思う。
先だって「日本料理」も世界遺産に指定された。何かにつけ日本人の「ものづくり」は
世界に冠たるものがある。それは長いあいだの歴史の伝統に育まれた日本人が持つ
頭脳、美学、感覚、器用さ、どれを取っても世界の誇るべきものと今更の如く感じ入る。
自分も職人の端くれだが、どんな場合でもどんな時でも物を作るという作業と苦労は
頭脳や技術だけでなく大変で研究にも時間とお金を掛け、といって必ずしも成功とは
限らない。失敗のほうが多いのは普通で、それでも挑んでいく心意気はとてもいいが
実際的に労多くして益少なく、コストパフォーマンスが悪い、割に合わない場合が多い。
それより売ったほうがいい。売ったほうが作るより、儲け幅が多いのも不条理を感じる。
商社もスーパーも商業のみの世界で、物を作る苦労と喜びも知らない人が多くなった。
お金を高利に回し鞘(さや)を稼ぐ金融機関の銀行もある。最近の政治も金を世間に
ばら蒔けば景気が上がるというのは生産より販売に力を入れるという方針なのだろう。
本来、日本は技術立国であり物づくりを第一優先しなければ必ず地盤沈下するだろう。
大学生の就職人気ランキングの10年前は「ソニーパナソニック・・」だった。それが
今季は「JTB三菱銀行・・」となっている。将来の技術立国日本に不安を感じてしまう。
外国の例で言えば華僑の経済思想がそれであり彼らは商業主義一本で暮らしている。
中国や韓国がノーベル賞には縁が薄いのは、ものづくりに適さない国民性なのだろう。
江戸時代は「士農工商」という身分制度があった。周知の通り「士」は武士で最上の位、
「農」は米や野菜を作る第一次産業、「工」は大工や工芸品を作る第二次産業、そして
「商」は金銭を扱い商いするのは最も低い身分とされた。「武士は食わねど爪楊枝」の
格言があるが、武士にはお金を持つことの卑しさという観念が武士の美学でもあった。
といって商業が卑しいと言っているわけでない。最近の日本人は楽をして儲けようと
競馬競輪、宝籤の公営賭け事や株や先物に手を出す人が多くなったのに嘆かわしい。
モノを言うのは一丁前だが、していることの愚かさ、不誠実、不人情など実に情けない。
古き良き日本人の情熱はどこへ消えてしまったか。見た目だけの表面だけを判断して
ホリエモンなど信じていた虚空な時代やバブルの世の中を二度と起こしてはならない。
豊田佐吉松下幸之助本田宗一郎も貧乏に育ち、丁稚奉公で鍛えた技術者だった。
今その人たちのおかげで戦後の日本を支えた経済近代史を忘れてはならないと思う。
利口で誠実な日本人が蘇って欲しい。日本を見直す時が来ている。