隠居の独り言(1408)

先日、東海道新幹線で一人の老人が焼身自殺をしたという前代未聞の事件があった。
自殺の原因は少ない年金で暮らしていけない現実に対して、社会へ報復するという
被害妄想の結果だろう。たしかにこの老人は月12万円足らずの年金の独り暮らしで、
家賃4万円風呂なしの部屋で日々絶望感に因われていたのだろう。年金の不公平は
以前にも書いたことがあるが大雑把に共済、厚生、国民の三種類だが、その他もあり
どちらにしても種類が多すぎ不公平の原因だ。ちなみに年金額は月平均、共済30万、
厚生20万、国民6万で若いうちから同じように働いた結果がこれでは不公平すぎる。
会社員にしても同様で正規社員と不正規社員があり、会社の業績によりサラリーにも
影響が出る。同じ会社の社員でも働く部署によって個人の成果の差も出てくるはずだ。
定年後、悠々自適の人もいれば、老骨に鞭打たなければならない人のいる世の中は、
どこかおかしい。職業も同様で同じ農業でもコメの生産農家には政府からの相当の
保護と助成があるが、野菜や果物農家には何の援助もない。自動車や電気関係にも
その種類・時期で景気浮揚策という打ち出の小槌があるが繊維、土木、軽工業には
政治は実に冷たい。友人のS氏は靴屋の経営者だが親会社が製造全般を外国製に
切り替えたので廃業せざるを得なくなった。群馬で下仁田ネギを栽培している親戚も
今年のネギの収穫で先祖代々の農家を辞める。玩具屋の叔父も昨年限りで廃業した。
斯く言う帽子屋稼業も昨今職人不足で残り幾ばくもなく受注に突撃すれども敵弾近し。
共通するのは外国製との競合、同業者の減少、決定的なのは跡取りがいないことで
それは仕事が苦労の割に稼ぎが少ない。商売が美味しいものだったら黙っていても
子供が跡を引き継ぐだろう。世の中というもの、思うようにならないのは百も承知だが
せめて政治は国民に公平を願いたい。与野党問わず自らの選挙戦に影響する箇所、
つまり与党は農林漁業、大企業、富裕層に甘く、野党は共済一般組合、日教組に甘く、
要は声の大きいところにはいい顔をし、声なき庶民には知らんぷりを決め込んでいる。
年金格差、職業差別が歴然としているのは恒例だ。新幹線を止めたのは罪が重いが
生涯を真面目に働いて、焼身自殺をした一人の老人を非難することができるだろうか。
本来民主主義政治は世の不公平を正すのが道であるはずだが政治家は忘れている。
すぐにも年金一元化を進めて欲しい。でないと、いつかどこかで、また事件が起きる。