小僧一人旅 その十四

商いの鉄則「入るを量りて出ずるを制する」は欠かせない。地道な方法で努力を継続するしか黒字確保の道はない。 利益性の高い商品の売上割合を少しでも増加させること、経費の効率を改善すること、自らを律することにも徹する。商人に限らずサラリーマンも将来の安定のため勧めたい。そして出会いは人生そのもの。仕事の出会い、友の出会い、伴侶の出会い、一期一会もあれば、生涯の出会いもある。理屈を越えて気が合う、合わないという感覚的なものだが、それも自分の意思と掛け離れた不思議な相性と縁がありどんなに努力しても人間の生涯の運命が定められてしまう。独り立ちして5年が過ぎ今まで多くの人と出会いを頂いたが、会った人の数だけ賢くなる気がする。最初は危なげだったが5年間一日休みなく仕事したことで地に足が着いた気がした。昭和39年に仕事上で大きな進展があった。独立当時からの得意先のアメ横のT商店(後のEDWIN)からアポロキャップを数万個の発注あり快く引き受けたものの小僧一軒では無理でメーカー仲間と手を組んで生産し、大いに稼がせてもらったが、この辺りから商いの基盤と帽子メーカーが出来た気分がした。何かと可愛がってくれたT商店のお女将さんを思い出すごと、小僧を大きくしてくれた感謝の気持ちは今でも忘れられない。おかげで店に職人さんたちが常時働いて商いも順調だった。ある日お女将さんから小僧にお見合いの話ありお願いした。