長寿社会 その十二

昭和は動乱の日々であったが昭和を語るには、その以前を知ることが必要と考える。人間の歴史というものは激変して動いている変動期と一度作られたシステムが長く続く平穏期の繰り返しで日本史で言えば100年続いた戦国時代が変動期で250年続いた江戸時代が平穏期であり、その平穏も黒船来航の幕末から明治の日清日露戦争を経験し第二次世界大戦が終わる100年間が変動期だろう。極東の小さな島国たる日本が思いっきり背伸びしてまなじりを決して戦ったのが日清日露の戦争だった。当時の清帝国はアジアの大国でありロシア帝国は世界の大国中の大国であった。両戦争とも日本が勝つわけがないと思われたのに連戦連勝したのに世界中が驚愕し、日本に対し称賛を惜しまなかった。しかしその称賛が仇になって日本を有頂天にさせた。日露戦争末期において日本の国力が尽き果てようとしており、したがって講和の周旋者としてのアメリカにむしろ感謝すべきなのに国力の現実も知らされずに連戦連勝の報道に酔い、ロシアから賠償金も取れず樺太も南部だけに終わった「怒りと恨み」をアメリカに向けたことが後々の日米の対立の遠因になっていく。アメリカは講和時に満州の共同経営を提案していた。イフは禁物だがアメリカと仲良くするチャンスだった。その後は今更言うまでもない。昭和は変動の殿だった。辛酸を舐めた戦争は二度とご免だが、昨今の情勢は先の終戦から続いていた一世紀近い日本の平穏期が、そろそろ終わりに近づいている感がしないではない。北朝鮮情勢、そして中国の台頭が日本を悩ませる。