隠居の独り言 1

人生の残高少ないが、落語で出る「横丁の隠居」に憧れる。でも実際は難しくFacebook上の架空の隠居の話をしたい。昔のご隠居さんは或る程度の齢になると家督を倅に譲って、郊外の風流な場所に庵を造り花鳥風月、趣味などに没頭し余生を過ごす。ときには庵に人を招き造詣深い茶人たちと管弦や詩歌を詠んだりして、四季の移りゆきを楽しんだ。隠居と言うのは今までの重い荷物や葛藤から解放されて自由気ままに人生の最終コーナーを歩く人のことを云う。落語に出る横丁の隠居は八さん熊さんとの会話が楽しく古き良き時代の、隠居のライフスタイルは羨望の的だが、江戸の昔は年金も健保も無く風流ばかりじゃ暮らせない。肝心の生活費は僅かの蓄えと、倅から月々の仕送りでお手伝いのお婆さんや、下僕の人と暮らしていたという。実際に悠々自適の隠居生活を送れたのは、ごく一部の富裕層でしかありえない隠居の身分は名実とも難しい。平成になると、定年という戦力外通告で隠居が増えたが、現役中は定年になったら田舎へ行って農作業をしたい・趣味に没頭したい・・家族と旅行したい・・夢は多けれど先立つものが徐々に減って、その夢もいつの日か消える。老後は変わりに変わって、終の棲家は老人ホームとなり、風流の影さえなく、若い人にお邪魔虫のように扱われて僅かな年金と、誰かの介護の世話で生きねばならぬ。江戸の隠居と平成の隠居とでは比較のしようがないが心の豊かさでは江戸の隠居に敵わない。