隠居の独り言 8

6月も中旬に入って、梅雨の季節最中だが、一年通じて、今が最も好きだ。夏の高温多湿の前に暑さ寒さも適当に適度な湿り気があって身体にとっても過ごしやすい時は、一年365日の中で多くない。幼い頃に母が唄ってくれた♪あめあめふれふれ、かあさんが・陽気なはずむ口調が昨今の季節に合っている。欧米ではジューンブライドで結婚の季節だが、人間に限らず、生きとし生きるものが恋や繁殖の季節で、植物は花から実へと命をはぐくみ、動物は子育てに忙しい。地球上の生き物たちの殆どが最も華やぐこの時期は、さまざまな節目の事柄が多く、歴史上でも世間を大きく変えた事件はこの時期が多い。恋の話でも昔は本当に好きな人との仲を隠すために別の人がいるそぶりをすることを「敵本主義」と言った。「敵は本能寺にあり」の明智光秀の言葉からの故事で1582年6月2日に中国地方の毛利家を攻める途中、急に踵を返し主君、織田信長を裏切って攻めた時に家来たち全員を集めて、この言葉で心を打ち明けた。確かに光秀は謀反をしたが、主君・織田信長の方が多くの人を殺し極悪非道な振る舞いをしたではないか。教養人でもあり領民にも慕われた明智光秀の謀反の決断をさせたのも梅雨入りの頃の妖しくも欝な気分の今の季節感が光秀の心をそうさせたのかもしれない。隠れ光秀ファンとして信長亡き後は秀吉や家康でなく光秀の時代が欲しかった。歴史は無情に出来ている。「時は今 雨が下しる さつきかな」光秀の心中を思う。