隠居の独り言 27

ギターを始めて今年で30年になるが自分の技量が一向に上がらないのは才無かったものと諦めるとして悔いはないが、良い仲間が多く出来たのと世間が広くなったのが大収穫だ。ギター仲間には夫婦互いにギター趣味で仲良くデュエットを組んでいる方もいるが何とも羨ましく妬ましく思うこともある。残念ながら我が家は同床異夢で相手は人形造り、ちぎり絵、手先仕事が好みでギターの音色はノイズとしか聞こえない。家でギター練習をすればテレビが聞こえないので叱られる。練習はもっぱら会社で職人が帰って短時間で集中的にする。とかく好みの違いは如何ともし難く好きな趣味を続けるには山の神の嫌がることを避けないと、こちらも頓挫してしまう。だからって夫婦仲の善し悪しに関係無いのは摩訶不思議で長く暮らしてきた老夫婦の阿吽の呼吸がそうさせるのだろう。吉田茂の腹心の部下で実業家の白洲次郎は奥方と仲が良く、記者の質問に「夫婦円満の秘訣はいつも一緒に居ない事だ」と語ったが的を射た表現で、つまり夫婦同業同趣味であれば仲がいいとは限らない。芸能人の離婚騒動は日常茶飯事だし、それを勲章のように思っている芸人も少なくないのも事実だ。与謝野鉄幹は「妻を娶らば才長けて見目麗しく情けある」と歌ったが、男ならどうせお嫁さんを貰うなら凡庸な女性よりも才色兼備で美人なら言う事ない。鉄幹の妻は言うまでもなく与謝野昌子だが、歌集「みだれ髪」の刊行で有名になって新聞雑誌から次々と原稿依頼が舞い込んで鉄幹の名声を遥か追い越したので鉄幹は肩身の狭い思いをしたという。結婚して妻のほうが成功すれば夫として立場が無くなると考えるのは古いのか。最近ではキャリア・ウーマンの妻が仕事の上で夫より成功する例がますます増えてきている。それに対して男が耐えられるのか、気になるところだが・・