隠居の独り言 41

ボクは時代小説が大好き。司馬遼太郎吉川英治藤沢周平山本周五郎海音寺潮五郎、池浪正太郎など、作家の作品は数え上げればきりが無い。時代小説の面白さは歴史の事実を作家によって想像力が違い、時代の背景や登場人物の魅力を存分に出しているのが凄いなぁと思う。例えば戦国の織田信長、この人ほど光と影の部分がはっきりしている日本史上の人物はいないと思うが、光の部分はそれまでの閉塞感のあった日本の既成の体制や権限を崩壊させ先見性や果敢な行動力で世界を見ようとして日本人意識を向上させた業績は誰より素晴らしいし、その後の日本史を見ても信長に勝る人は二度と現れなかった。織田信長に非業の死がなければ、世界に向けて覇権を唱える器量とチャンスがあったのに惜しいことをしたものと今更に思う。光の部分は素晴らしいが影の部分もそれに増して凄いもので、僧俗4000人を殺した叡山焼き討ち、一向一揆の20,000人の長島や越前の虐殺、荒木一族の全員殺戮など嗜虐的な性格は、20世紀におけるヒトラースターリン毛沢東ポル・ポトなどの暴虐者となんら変わるところが無い。誰も光と影を背負っている。ボクも今まで良かったこと後悔したこと、あざなえる縄の如しで八十路を今になって反省しきりだが、変えることはもう不可能。時代を書く小説家は同じ歴史上の人物でも捉え方がそれぞれ違っていてなかなか面白いが、時代背景のもと市井に生きる庶民を描いた作品も好きで読んでいると昔も今も基本的には人間の物の考え方や感じ方、人情味は変わっていない事に安心し、今日も楽しく読んでいる。