隠居の独り言 48

女の人は芯が強いなぁ、と思うのは夫に先立たれても不死鳥のように蘇えり、益々元気になって友達同士でいつも楽しく付き合って旅行などをしてはしゃいでいる。男は駄目で奥様に先立たれると残りは僅か2年という。いかに今まで奥方に頼ってきたか数字を見て愕然とする。男は偉そうなことを言っても実は弱い人間性なのだろう。それと気持ちが繊細なので歳を重ねてもロマンティストで恥ずかしながら恋心は失わない。80数年の人生の中で恋をした事は数々あるが、今でもどこかで偶然会ったらと儚い夢を見ることがある。未練心とは男のためにあって構造的に心底から片思いに耐えられるように出来ている。女は自分が恋した男は絶えず自分だけに向いていないと気が済まないらしい。つまり恋人への独占欲は女のほうが、圧倒的に強く片思いには耐えられない。だから別れた時の諦めも早く、あれほど好きだった男でも、好きから嫌いへと180度転換してしまうが、男はそこまで極端に変われない。それは、女心は恋に対して、エゴイストになれるからだろう。女は男を好きなればとことん愛してしまう。例え脂肪腹でも、眼鏡が厚くても、教養が足りなくても全て愛の対象になって溺れるように恋に陥っていく。それは恋愛というより、恋に恋しているからで、受けた傷は深くても立ち直るのも早い。恋の入り口は易しいけれど出口が難しいのはその辺りの原因が重なって、だから多くの男女が恋のヤケドをする。でもその失敗を重ねる事によって恋の美しさや儚さが判る。お金持ちの息子や娘、順風満帆に育った人、天才、才女、このような人たちは容姿もまぁまぁ、小遣いに困らないし、外国語の一つも喋れるが恋をしたことが無い人の多くは、恋はされるものだと思い込んでいるからで傲慢ともいえる。だからどんなに身を飾っても全体に緊張感が見えてこない。真実の恋は相手にかしづくもので、自分を捨て恋がある。かしづかれた生活の経験をした者には恋は縁の薄いもの、物質的な豊かさからは美しさ、優しさ、恋心も生まれない。音楽も絵画も彫刻も文章も強靭な体験で磨かれなければ、艶やかな輝きは出てこない。