隠居の独り言 55

夏が来れば思い出す。其の四。日本軍の緒戦の快進撃も昭和17年半ばころまでで、僅か数ヵ月で終わってしまう。当時アメリカは日本の軍部や政府の交換する機密文書の暗号文を解読した。真珠湾攻撃も既に解読されていたが、アメリカ・ルーズベルト大統領は事前に国内外に発表せず、日本の騙し討ちとしてアメリカ国民の戦争鼓舞に利用した。暗号の解読は日本軍の行動の全てを見透かされていたがこちらが気付かなかったのもお粗末としか言いようがない。史上稀に見る快進撃を続けた日本軍だったが昭和17年6/5日のミッドウェー海戦で空母4隻を失う大損害を受け戦況が不利となり、徐々に日本は後退を重ね、その次の昭和18年6/19日のマリアナ諸島の海戦で連合艦隊は壊滅して、太平洋全体の制海権を完全に奪われてしまう。その後、日米両軍は何回かの海戦もあったが全て負けで昭和19年後半以降は日本海軍の船舶は無に等しかった。アメリカ軍は島沿いにペリリュー、サイパン硫黄島を落とし、日本本土空襲のための空軍基地を確保し彼我の国力差と戦術が大きく違ったのも戦争の勝敗を決定的なものにした。そもそも海軍の連合艦隊というものは、巨砲の持つ戦艦を旗艦として、巡洋艦駆逐艦、等々数十隻の艦がセットで指揮官のもと規律よく一匹の猛獣のように戦うのが艦隊だ。しかし日本の対米決戦用の連合艦隊はワンセットしかなく(アメリカは太平洋2、大西洋1)しかも船を動かす燃料が不足で石油浪費を避けなければならないのに南太平洋のミッドウェーにまで大艦隊が出撃する必要があったのか。ちなみに日露戦争もワンセットで日本の近海、或いは港で、ロシア・バルチック艦隊を待ち受け日本海海戦で完勝した。そんな良いお手本があったのにも拘らず、なぜ日本近海で、待ち伏せしなかったのか。ここで制海権も制空権も完全にアメリカ側が手中に収めれば後は赤子の手を捻るに等しい。日本は負けるべきして負け、アメリカは勝つべきして勝った。世界戦争史の笑い種だ。軍国少年は東条と共に海軍の山本五十六を「軍神」と崇めていた。それなのに五十六は真珠湾の指揮官でありミッドウェー海戦の司令長官だった。後で夢から醒めて、愚将たちに洗脳された少年が嫌になる。