隠居の独り言  99

歳のせい、いや歳のせいにしてはいけない。物忘れ酷い。とくに人の名前や行ったところの地名が咄嗟に出てこない。山の神で話す時に「ほらほら、あの人だよ、あそこだよ」と言いつ思い出そうとするが、結局思い出さないままに終わってしまって、後で思い出す。小説を読むときだって推理小説なら犯人と被害者と探偵の三人の構成なので三人を覚えていればいいが、そこに脇役が出てくるから話が複雑になり、周辺の事柄が分からなってしまうので最近はシンプルなストーリーの本を読むことにしている。昔を振り返るとスラスラ記憶できたのは小学の時だけで歴史の年表や唱歌、人名、地名,算数・・さらには講談や浪花節が好きだったので剣豪、遊侠物語なんでも覚えた。教育勅語軍人勅諭の記憶も、今でも薄ら覚えている。それは今風に言えば頭脳に「記憶容量」というのがあって大きなディスクの頭の中はガラガラ空きだったのだろう。あれからウン十年も生きて、年寄りの域にまでなれば記憶容量も一杯になって何かを捨てないと新しい物の入る余地が無くなる。どうでもいい昔の浪花節の歌詞を今も覚えているのに今の流行り歌は中々覚えられない。古い先哲の残した名言も忘れるのはボケの始まりか?通勤電車の中に傘や本を忘れるのは日常茶飯時だし、眼鏡を掛けて眼鏡を探すことも同居人から軽蔑される。心配なので病院でMRIの検査を受けたが、数日後に医者から認知症は大丈夫、脳梗塞脳卒中の兆候もゼロですよと告げられ安心したが記憶力とは関係ない。因みに記憶には短期と長期があって数学などは短期、国語などは長期だろう。まぁいろいろなことを経験してそれを覚えて、また忘れる。老後はこれでいいのだろう。仕事、趣味、家族・・色々忙しいことが多いのは昨今の老後を楽しむ一番のコツはこれだと一人合点している。