隠居の独り言 126

環境問題が取りざたされているが大きく分けて自然と社会と二つあるものと思う。昭和初期に生まれた者が感じるのは自然の環境が大きく変わったのは人口が増えそれに伴って住宅が増え農地や林野が少なくなったのは仕方ないけれど社会環境も悪化したのは日本人の倫理観の欠如が大きい。倫理観とは、日々のバスで通学する某小学校の生徒たちが停留所で降りる時、運転手に「ありがとう」と声を掛けている。挨拶する生徒たちの姿勢に「礼」の根本を見た思いがした。最近の不可解な殺人、幼児虐待、詐欺事件、諸々不正や偽装が多すぎ日本人はどうしてここまで堕ちてしまったか、未来の日本人の道徳観を憂える。元ハワイ州知事で戦後進駐軍兵士の一人だったJ・アリヨシ氏の書いた日記には『日本に進駐して初めて会った日本人は靴を磨いてくれた7歳になる少年だった。言葉を交わすうち、少年が戦争で両親を亡くし、幼い妹と2人で暮らしていることを知った。その年は大凶作で100万人の日本人が餓死するといわれ少年の空腹は隠しようもなかった。次の日に私は兵舎から持ち出し禁止のパンをナプキンに包んで少年に渡した。少年は「ありがとうございます」と包みを靴箱に入れた。「お腹は空いていないか」少年は「お腹は空いています。でも3歳の妹が待っています。一緒に食べたいのです」お腹を空かせた7歳の少年が3歳の妹と一片のパンを分かち合おうとした日本人の情愛に深く感動を覚えた』元知事の手紙は、かつての日本人が持っていた義理、人情、責任、恩、お陰さま、人のために、国のために・・日本人特有の美徳感はどこへいったのかを問うている。かつて少年も今は老人になり、当時を偲んでいるだろう。外国人に言われるまでもなく、昨今のニュースの醜聞は現代に生きる日本人としてとても恥ずかしい。