隠居の独り言 128

テレビの司会者・小倉智昭さんが膀胱がんを患い全摘手術に踏み切るという。日本人の死因の最も高いのはガンに依るが先日、厚労省はガン専門病院などで作る施設別の各種ガンの治療した後の5年経過した生存率を集計した統計を発表した。治癒率もそれぞれだが、統計を見ても、どうなるものじゃない。ガン発病、寿命、これは神の領域であって人の周知を超える。ボクも16年前に前立腺ガンの摘出手術を受けたが、術後が順調とはいっても何時再発や転移するか分からないところが厄介な病気と今も感じている。日本人の3人に1人がガンで死亡するという国民病だが、考えればそれだけ寿命が延びて長生きをするようになったからで、後は神様の思し召し次第・・ガンの細胞は設計図であるDNAに傷がついてしまった細胞で、誰もが罹る細胞の老化といえる。初めてのガン細胞が検査で分かるようになるには未だ時が必要で、世界一の長寿国家の日本人が罹患率の高いのも当然だ。衛生環境や医療制度が良くなって長生きすればするほどガンという業病が待っている。けれど医学が進んで死因の第一位のガンが撲滅出来れば日本人の平均寿命がさらに延びて人生100年も夢じゃない。俗に四百四病という。どこかの部品が傷むのは仕方ない。でもそれが本当に目出度いか、鶴亀が増えるのが幸せなのか、長寿社会を維持出来るのか、今でも日本人の4人に1人は65歳以上の老人で保険や年金暮らしも破綻寸前になっている。本当の意味で長寿が目出度いのは人数の割に端的に少なく珍しかったからで高齢者がこんな多くては決して目出度くない。人生が短かった江戸時代以前の老人は隠居なり翁なりとして後進に範を垂れる知恵を持つ賢人として社会から尊敬された。「横丁のご隠居」は博識で、町内の悩み事も解決してくれたし、翁になれば長寿目出度い「高砂の松」と象徴され崇められた。今は文明の流れが早過ぎて老人は若い人についていけない。江戸時代の俳人芭蕉は36歳で職業の俳諧師を辞め隠居し、51歳で没するまで孤高の境地で自らの道を極める旅をした。昔の人は老いると翁と称したが、「芭蕉翁」とは若すぎる。「此の道や 行人なしに 秋の暮」  芭蕉