隠居の独り言 157

一年を楽しませてくれた大河「西郷どん」が終わったが、今年は明治維新150周年に当たり、記念すべき年に維新を語る「西郷どん」を上映したのは良かったと思う。幕末の頃は綺羅星のように多くの優れた人材の志士が活躍し、そして流れ星のように散っていった。歴史上でこんな素晴らしくも惜しい人材を失った時代も無いだろう。表立った立役者は桂小五郎西郷隆盛大久保利通の三人だが、でもドラマを見て陰の功労者には私利私欲を捨て、献身的に国の曲がり角を支えた三人を挙げれば、私見では篤姫小松帯刀徳川慶喜ではないかと感じる。篤姫はご存じなので省くが小松帯刀島津久光の側近で薩摩藩をまとめ若輩の西郷や大久保の才能を取り立てた。慶喜の場合、大政奉還をした後は朝廷には絶対恭順で歴史の中から消えようとした英知と決断が日本を救う。もし彼が将軍の権力に固執しあくまで戦争を続行すれば日本中が内戦状態で、住民や財産の被害は計り知れず陰で操っていたイギリス・フランスの列強の餌食になり日本が植民地になったのは時の必至の国際情勢だった。彼らの私利を捨てた心は維新の最高の功労者といえる。加えて慶喜大正2年まで77歳の長命を授かったが、のんびりと隠遁した慶喜は最も幸せ者だったかもしれない。亡くなった後は48歳で生涯を閉じた篤姫と夫・家定と共に徳川家菩提所の上野寛永寺に葬られた。泉下で三人はきっと「西郷どん」を見ていたろう。どんな思いだったか。最終回は「敬天愛人」。天を敬い人を愛す、西郷どんの人格そのものを伝えながら、今年の大河ドラマも終わった。