隠居の独り言 164

世界の交通が発達すればするほど、行動範囲が拡大するが、拡大とともに考える次元も大きく地球を飛び出して宇宙になる。人の歩く速度は時速4キロと云われるが、自分に置き換えると自宅から会社までの距離が約8キロで歩けば2時間かかるが、車だと約20分、便利になったものだ。といって今は健康のため車を捨て電車やバスを利用して1時間以上かけ通勤している。歌川広重の絵で有名になった東海道五十三次は江戸→京まで約490キロ、これを当時の人たちは2週間程度で歩いたという。平均1日35キロを歩いたことになる。軟弱な現代人に比べても昔の人の健脚ぶりに驚きだが、そのうえ食物は現代より粗食で履物は草鞋だったから平成に生きる我々は想像を絶する旅だ。情報の発達も素晴らしい。忠臣蔵の内匠頭の切腹の知らせは赤穂まで早足の飛脚で5日掛かったというが今はリアルタイム。戦後になっても、しばらくは遠距離の旅行は容易でなく、ボクが1948年に上京時には姫路から東京まで450キロの東海道線を窮屈な席の夜行列車で13時間半をかけ上京したものだったが、今では東京から新幹線で3時間、姫路城など見学して日帰りで堪能できる。若い頃の新婚旅行には箱根か熱海が定番だった。しかも箱根は湯元辺りが繁華街で、芦ノ湖は遠い彼方だったし、熱海から伊東を過ぎ先の南伊豆は天城越えの秘境の地だった。約100万年前に誕生したとされる人類アフリカ起源説によれば我らの遠い先祖様である原生人類ホモサピエンスは2本足で数十万年かけて地球上全て隅々にまで拡散していったという。長い時間で人種は肌色が異なり、言葉の違いも顕著になった。それでも素晴らしき人類先輩のフロンティアのロマンがあった。現代は交通手段がないと徒歩では大陸間の移動はできない。以前に「80日間世界一周」という面白く素敵な映画があったが僅か数十年前まで世界旅行には日数と数々の危険が伴った。今は良き時代、今年も山の神と気の向くまま、あちこち旅をした。