隠居の独り言 169

昨年末に近所の某材木屋が倒産し、夜逃げ同然に姿を消した。広い家に住み高級車に乗り材木屋は金持ち風情を装っていた。近所の商店街の何軒かが商品や飲み代が踏み倒されたという。どのような事情にせよ人を騙し、自らの享楽のため多くの人に迷惑掛けた行為は許されない。日本人のお金に対する道徳心は以前と随分と変わったように思う。今欲しいものがあれば自分が対価を今払えなくても手にしたい弱い気持ちが借金という地獄の入り口に抵抗もなく入っていく。以前は生きる基本の目標を持つということは滅多に借金をしてはいけないと親から教えられたし、ものが欲しければお金を溜めてから買いなさいと強く諭された。以前の風潮は「武士は食わねど高楊枝」で若い時は身を削ってお金を貯め、所帯を持ち、子育て、そして老後のために蓄えた。現代のように年金も健保も無い時代、将来に夢を持ち目的の哲学があれば、遊びごとや贅沢に借金は出来るものでない。今の風潮は、例えば結婚式の費用は親が負担し、家や車はローンで手に入れる。待つことのできない心根の先取りにはローンという化け物に精神まで食いつぶされて生きる目標も夢も望みも失くしてしまう。質素倹約を旨としていた日本人のお金に対する確固たる価値観はどこへ消えてしまったのか。若者の通念は砂上で道の基本の脱落としかいいようがない。膨大な国債と借金財政の国家予算が自堕落さを象徴する。来年の予算は収入60兆円なのに支出100兆円、しかも政治家先頭に国民も不思議がらない風潮に暗然としてくる。高齢化が進み高齢者がどんどん増え今4人に1人以上が65歳以上で、高齢者が病院に通ったり介護にかかる費用が国の財政を圧迫しているということであり、高齢者になれば、誰でも若い時より病院や介護にかかる必要は言うまでもない。高齢者層の医療費の自己負担は1割〜3割だから、残りは税金で賄わなくてならない。今は国民総資産が国債残高を上回っているので凌いでいるが、いつまでも続くわけでない。近い将来、社会保障、年金機構が破綻するのは必至状態で消費税を始め様々な税金がアップするのも仕方ないだろう。若者の失業対策、定年制の見直し、年金支給の繰り上げ、高齢者サービスの廃止、等々、暫くの我慢を強いられるが国が破綻してからでは遅すぎる。みんなで知恵を出したい。