隠居の独り言(1019)

今日1月30日は亡父の命日だが、それと共に今年は父の生誕100年にあたる。
父は大正元年の生まれだから大正の元号でいえば大正100年ということになる。
士族の流れをくむ父は子供への躾けが厳しく反抗もしたが行儀作法や教育など
少しは自分の中に残って父親として育ててくれた優しさと感謝の念は消えない。
思えば父が生まれ育った大正の時代(1912-1926)を歴史として遡れば近代日本が
一番幸せな時期であったと思う。大正は僅か15年の短さだったが当時の日本は
外交的に日露戦争後のロシアからの脅威は無くなり日英同盟もそのまま存続され
日本は平和と繁栄をこれほど味わった時期は無い。時は大正ロマンとも称されて
文壇では芥川龍之介志賀直哉若山牧水、有島武朗・等々、画壇では横山大観
菱田春草、竹下夢二などが活躍し女優の松井須磨子がカチューシャの唄を歌って
人々の心を明るくした。西洋の文化文明が日本人に一斉に開花し生活の豊かさが
全国に浸透したのもこの時期といえる。交通では鉄道や道路が津々浦々に敷かれ
都会ではダンスホールや喫茶店が開店し流行服を着たモボ・モガの若者が街中を
闊歩して西洋かぶれを謳歌した。世界では第一次世界大戦があったがイギリスの
要請で青島に駐留するドイツ軍を攻撃したりインド洋や地中海に駆逐艦隊を出し
イギリスを助けたが太平洋のドイツ領南洋諸島を戦後には日本の統治下に入って
日本国の地図が赤い色で最も広く大きく描かれたのは大正の時期をおいてない。
でもその古き良き時代も長続きはしなかった。戦略的な失策は軍部の台頭であり
他国の干渉もあったが日英同盟の破棄が最も大きく先進国から孤立を深めていく。
大正12年秋に起きた関東大震災大正ロマンモダニズムを一気に吹き飛ばし
昭和の奈落への道はこの辺りから始まったといえる。歴史は繰り返されるという。
今に当てはめれば戦後の高度成長の繁栄を貪ってきた日本が東日本大震災を機に
政治も経済も凋落の一途を辿るのではないか?泉下の父も心配しているだろう。